走馬灯のセトリは考えておいて(柴田勝家)

「オンライン福男」「クランツマンの秘仏」「絶滅の作法」「火星環境下における宗教制原虫の適応と分布」「姫日記」「走馬灯のセトリは考えておいて」の七作からなるSF短編集。といってもSF的知識(未来、科学、宇宙)はとくにいらないのですっと読める。

すべての作品がめちゃくちゃ面白かった。一作目の「オンライン福男」からしてめちゃくちゃ面白くて期待値があがりながら読んだけれど、それを超えてくる面白さだった。

「クランツマンの秘仏」で面白い仮説が書かれてあって、「信仰の有無こそが物質に固有の霊的質量を与える」「信仰がある限り秘仏は存在している」「対象における信仰の総量が質量を決定づける」オカルトとかではなく、普通にあり得そうでよかった。実際にそんな秘仏があるのだろうか。調べればいいのだけれど調べていない。

「福男」「秘仏」はもちろん、表題作の「走馬灯のセトリは考えておいて」のエモさがやばかった。じんわりと大変よい。こういうことが現実になるとめちゃくちゃよいけれど、そんなにはテクノロジーは進歩しないし管理社会にもならないだろう。

読んで読んで。