最後にして最初のアイドル(草野原々)

「最後にして最初のアイドル」「エヴォリューションがーるず」「暗黒声優」

まず表題作。自殺したアイドルで親友のみかを助け、アイドルとして復活させるために医学生の眞織は暗躍する。あるとき異常なほど規模の大きな太陽フレアがおこり、悍ましい量の磁力が地球に注ぎ……。

いろいろ斜め上すぎる作品だった。こんな「アイドル」小説あるんか。とても面白かった(語彙力)が、わたしは残り二作の方が好き。

「エヴォユーションがーるず」。スマホアプリ「エヴォリューションがーるず」廃人となった洋子はあるとき画面を見ながらコンビニへ向かう途中の道でトラックに跳ねられて死ぬ。そしてエヴォがるのシステムが採用された世界にアメーバとして蘇り……

これめちゃくちゃ面白かったな。ソシャゲの要素をこんな風にSF小説に落とし込んで、しかもそれが面白いという。よかった。

「暗黒声優」。「発声管」を持つ声優たちは、その声によってエーテル振動を操る。声優の活動は、エネルギー保存の法則を破り、原理的に言えば声優を使って永久機関を作れることがわかった。そうして「人工声優」たちが生まれる。声優がエーテル振動をコントロールすることにより、重力操作ができる。このため、宇宙産業で重宝されるようになって……

めちゃくちゃよかった。最後エモかったし、そもそも「声優」をこんなふうに使おうっていう発想がぶっ飛んでてすごい。

三作とも発想がお化け。物理学の知識があればより楽しめると思うのだけれども、なにしろド文系でね。