ちょっとした感想

ディスコ探偵水曜日(舞城王太郎)

迷子専門の探偵をしているディスコ・ウェンズデイはある事件をきっかけに梢と暮らしている。あるとき梢に未来の梢がやってきて、物語が動き出す。やがて探偵が連続自殺を始め、ディスコも運命にいざなわれるようにしてパイン・ハウスに向かう。そこで待って…

本の背骨が最後に残る(斜線堂有紀)

「本の背骨が最後に残る」「死して屍知る者無し」「ドッペルイェーガー」「痛妃婚姻譚」「『金魚姫の物語』」、「デウス・エクス・セラピー」「本は背骨が最初に形成(でき)る」からなる短編集。 いやーよかった。物理本が無くなり物語を語る人が「本」とな…

猫背を伸ばして(押切蓮介)

ハイスコアガールの押切蓮介のエッセイ漫画。子ども時代のことから漫画家になってからのことまで。順番は時系列ではない。 母ちゃんが最高だ。あと押切蓮介めちゃめちゃ苦労人だよなあ。こんなに苦労してたらわたしならグレそう。そして、成績がすごく悪かっ…

臆病な僕らは今日も震えながら(汐見夏衛)

虹色の夢を見る少女きららは、母の命と引き換えに生まれた。母親の記憶を持つ父親と姉と壁を感じている。またなんでもできてハキハキしている姉と異なり、クラスでも目立たない存在のきららは、どこにも居場所がないと感じる。そんなある時、あの虹色の夢の…

ハイスコアガール(押切蓮介)

劣等生のハルオが唯一輝ける場所、それはゲームセンター。しかしあるときそんなゲーセンに、学校でも秀才で眉目秀麗の少女大野が現れて…… いやーこれ何回読んでも本当にいい。10巻再読一気読みした。結構最初の方から大野がハルオラブ全開でかわいいのにハル…

さくらももこをたくさん

2、3日、さくらももこをひたすら読んだ。 あのころ (集英社文庫) 作者:さくら ももこ 集英社 Amazon まる子だった (集英社文庫) 作者:さくら ももこ 集英社 Amazon ももこの話 (集英社文庫) 作者:さくら ももこ 集英社 Amazon ひとりずもう (集英社文庫) 作…

君の話(三秋縋)

技術が発展し、過去の記憶を消したり、架空の記憶「義憶」を埋め込んだりすることができるようになる。主人公の父親も、義憶の中にだけ存在する義者を妻として愛し、母親は主人公の他に4人の子どもを持った。19歳になった主人公は、あるとき記憶を消す「レー…

キネマ探偵カレイドミステリー 輪転不変のフォールアウト(斜線堂有紀)

第三部。 「第一話 逆光無効のトライアンフ(バック・トゥ・ザ・ヒューチャー)」「第二話 依然必然のアクチュアリー(ラブ・アクチュアリー)」「第三話 輪転不変のフォールアウト(俺たちに明日はない)」 第一部第二部はこちら。 nagakutemijikaiinu.hate…

キネマ探偵カレイドミステリー 再演奇縁のアンコール(斜線堂有紀)

カレイドミステリー第二部。 「第一話 再演奇縁のオーバーラップ(スタンド・バイ・ミー)」「第二話 自縄自爆のパステルステップ(アーティスト)」「第三話 正誤判定のトレジャーハント(バグダッド・カフェ)」 第一部はこちら。 nagakutemijikaiinu.hate…

放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件(知念実希人)

児童書。ミステリの入門書。 陸、美鈴ちゃん、天馬くんの3人は、小学校の一角に部室を作り、放課後ミステリクラブと称して時間を過ごしていた。あるとき、プールの授業が中止となる。プールに金魚が泳いでいたせいだ。真理子先生に依頼され、天馬くんはその…

マリアビートル(伊坂幸太郎)

殺し屋シリーズの第二弾。 息子を殺しかけた高校生を殺すためにアルコール依存症の木村は画策し、犯人の乗る新幹線をつきとめ復讐しようとする。蜜柑と檸檬は業界のドン峰岸の息子を助け、仙台まで連れて行く任務を課される。七尾は新幹線に乗ってトランクを…

神のちから(さくらももこ)

えこれあらすじとかじゃない。シュールにもほどがあんだろ。すさまじかった。さくらももこのある意味真骨頂……なのか。すごかった。一読の価値ある。 神のちから (愛蔵版コミックス) 作者:さくら ももこ 集英社 Amazon

ランチ酒(原田ひ香)

全十六話からなる連作短編。犬森祥子は友人の、「夜間の見守り」を提供する会社、中野お助け本舗で働いている。そのため仕事終わりがランチどきとなり、毎日のランチ酒を心の拠り所として生きている。話を進めるにつれ明らかになる祥子の背景なども興味深く……

キミトピア(舞城王太郎)

「やさしナリン」「添木添太郎」「すっとこどっこいしょ」「ンポ先輩」「あまりぼっち」「真夜中のブラブラ蜂」「美味しいファワーヘッド」からなる短編集。 なんか主人公たちがみんな独善的で頭でっかちで誰にも共感できない。これを最初に読んだら舞城ファ…

キネマ探偵カレイドミステリー(斜線堂有紀)

「第一話 逢縁奇縁のパラダイス座(ニュー・シネマ・パラダイス)」「第二話 断崖絶壁の劇場演説(独裁者)」「第三話 不可能密室の幽霊少女(ブレア・フィッチ・プロジェクト)」「第四話 一期一会のカーテンコール(セブン)」 英知大学は入試はもちろん定…

あなたの人生の物語(テッド・チャン)

「バビロンの塔」「理解」「ゼロで測る」「あなたの人生の物語」「七十二文字」「人類科学の進化」「地獄とは神の不在なり」「顔の美醜について」からなる短編集。 「バビロンの塔」と「地獄とは神の不在なり」がすごくよかった。 「バビロンの塔」は天をつ…

かがみの孤城(辻村深月)

学校で居場所をなくしたこころは、あるとき自室の鏡が光っているのに気づく。鏡の中に入るとそこは城のような建物。同じ年代の子どもたちが7人集められ、「鍵」を探し「部屋」を見つけると願い事が叶うのだと言われる。7人はそれぞれに事情を抱え、かがみの…

未来職安(柞刈湯葉)

「未来職安」「未来就活」「未来家族」「未来作家」「未来医療」「未来雇用」からなる連作短編集。「生活基本金」が全国民に支給されるようになった未来。働いている生産者は、全消費者の1パーセント程度となった。生産者が世の中の富を生産し、所得税を納…

横浜駅SF(柞刈湯葉)

横浜駅が自己増殖をして本州全土と四国を覆った。そんな横浜駅の外、九十九段下で育ったヒロトは手に入れた18きっぷを利用して五日間エキナカに入ることになった。その際かつてエキナカから追い出された東山に「キセル同盟」のリーダーを助けてほしいと言わ…

ルックバック(藤本タツキ)

学級新聞に4コマ漫画を載せている藤野はある日担任に4コマの枠を一つ、登校拒否児童の京本に譲ってくれと頼まれそうする。すると、驚くくらいの画力のインスト4コマを京本が書いた。それが悔しくて藤野は、友だちに忠告されるくらいひたすら絵の練習をす…

楽園とは探偵の不在なり(斜線堂有紀)

天使が降臨し、二人殺すと地獄に引きずり落とされる世界になった。世界では連続殺人がなくなった。そのことで探偵の仕事はなくなる。地獄の存在が直接的に殺人件数を減らしたことで、どれだけ事件を解決しても殺人を止められなかった探偵の青岸焦は無力感を…

地雷グリコ(青崎有吾)

「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」「エピローグ」からなる連作短編集。 高校生の真兎が、文化祭の模擬店出店場所を巡って生徒会の椚と戦う「地雷グリコ」に始まり、どれも真兎がヒリヒリと…

おんぶにだっこ(さくらももこ)

さくらももこの幼少期を記したエッセイ。いつもは小学生、中高生などの時代のことを書いているが、この作品は珍しくそれ以前の出来事を書き留めている。 さくらももこの子どもの頃って、よく引っ込み思案だったとか聞くけれど、その背景として「こんなこと考…

横浜青葉高校演劇部 コント師になる!?(田中ヒロマサ)

演劇部部長の風里が部員が集まらずに途方に暮れていると、中学時代一緒に演劇をやっていた海斗から、コントのコンテスト「エンペラーオブコント」への出場を持ちかけられる。初めは渋っていたが、海斗の熱意に押されて…… いやーよかった。文章が特別うまいと…

シャーロック・ホームズの凱旋(森見登美彦)

まったく仕事ができなくなり引きこもりがちになってしまったシャーロック・ホームズとワトソンが「京都」の街でわちゃわちゃと謎に見舞われ、再生していく物語。「京都」??? まったく予想だにしていなかった設定だった。前情報なく読み始めたので、京都の…

回樹(斜線堂有紀)

「回樹」「骨刻」「BTTF葬送」「不滅」「奈辺」「回祭」からなるSF短編集。SFだけれど、宇宙や科学の知識は要らず、誰でも楽しく読める。 どの作品も「そういうことがあったのかもしれない」「そういう未来があるのかもしれない」と思えるリアリティのある小…

最後にして最初のアイドル(草野原々)

「最後にして最初のアイドル」「エヴォリューションがーるず」「暗黒声優」 まず表題作。自殺したアイドルで親友のみかを助け、アイドルとして復活させるために医学生の眞織は暗躍する。あるとき異常なほど規模の大きな太陽フレアがおこり、悍ましい量の磁力…

走馬灯のセトリは考えておいて(柴田勝家)

「オンライン福男」「クランツマンの秘仏」「絶滅の作法」「火星環境下における宗教制原虫の適応と分布」「姫日記」「走馬灯のセトリは考えておいて」の七作からなるSF短編集。といってもSF的知識(未来、科学、宇宙)はとくにいらないのですっと読める。 す…

「推し」で心はみたされる?〜21世紀の心理的充足のトレンド(熊代亨)

推し活ブームまでの遷延と、推し活を、マズローとコフートが提唱した概念から説明する本。 「推し活」といっても、キャラや芸能人ではなく、上司、同僚、部下、友だちといった身近な人と推して推されてを繰り返して健全に所属欲求、承認欲求、ナルシシズムを…

ちょっと不運な方が生活は楽しい(田中卓志)

アンガールズ田中のエッセイ。田中の人生のエッセンスがギュッと詰まっている一冊。「ちょっと不運どころじゃねーだろ」という話もあったり。あの有名なお母さんのお弁当のエピソードも収載されている。 いじめられてたんかー。さらっと流されていたけれど、…