君の話(三秋縋)

技術が発展し、過去の記憶を消したり、架空の記憶「義憶」を埋め込んだりすることができるようになる。主人公の父親も、義憶の中にだけ存在する義者を妻として愛し、母親は主人公の他に4人の子どもを持った。19歳になった主人公は、あるとき記憶を消す「レーテ」を買うことにした。それまでの人生に何もなかったから、いっそすべてを忘れようと思ったのだ。しかし業者の手違いがあって、義憶を植え付ける「グリーングリーン」を飲んでしまう。それ以来、主人公には、記憶の中にだけいる幼馴染がいて……

いやこれとてもよかった。前作は「ジェネリック村上春樹」で完コピすごいって感じの凄さだったんだけど、今作は文体も個性がきちんと入っていてよかった。この人、設定を作って物語を展開するのだけれど、この義憶って技術はすごいと思った。SF界では定番なのかもしれないけど。
でまあその技術だけが未来であとは現代として読めるのでSF読めない人も読めるようにできてる。でもやっぱ村上春樹を好きなんだろうなとは思った。村上春樹はこの先新刊も出ないだろうし、初期から中期の雰囲気を残したこの作家がいてくれれば、まだまだあの空気感を楽しめるのかもなと思った。
お見事でした。