おんぶにだっこ(さくらももこ)

さくらももこの幼少期を記したエッセイ。いつもは小学生、中高生などの時代のことを書いているが、この作品は珍しくそれ以前の出来事を書き留めている。

さくらももこの子どもの頃って、よく引っ込み思案だったとか聞くけれど、その背景として「こんなこと考えてたんだ」っていうのがよく分かってなんか面白かった。妙に冷めた子だったとか、かといってお調子者なところもあって。そういう性格が下敷きになって、日常をよく観察し記憶し、作品に昇華していくことができたんだろうなと。

「お嫁に行った育ちゃん」とか「窓のおばあちゃん」とかがエモくて、「雲の中に入った思い出」は没入感がよかった。ほんわかしたものだけでなく「盗んだビーズ」「上松君のランドセル」「松永君をぶった」など、心に深く刻まれていたであろう自身の罪悪感にも向き合っていて、やはりいつものエッセイとは違うテイストとなっている。

卓越した記憶力と、その再現力、情景描写、心理描写も素晴らしくて、まるで自分が経験したかのように感じてしまう、すさまじさがある。文章も上手いし。あとがきにはプロ意識をすごく感じた。